買った人も売った人も、幸せになる世の中に

「住宅は個人の持ち物」という意識は住む人自身にも強く、それゆえ「自らの家の品質」に対して、客観的な視点に欠ける傾向があります。

たとえば、家を買うとき、建てるとき、私たちはその選択基準の第一を「自分にとって住みやすいこと」に置きがちです。もちろん、それ自体は悪いことではありません。しかし、「自分のこと」しか考えないために、普遍性に乏しい、

凝った間取りにしてしまったり、快適性や省エネルギー性などの基本性能を軽視してしまったりしては、他人に引き継ぎにくい建物になりかねません。「自分が一生住むのだから、それでいいじゃないか」と思うかもしれませんが、何が起きるかわからないのが人生です。

親の介護や離婚のために生活が一変してしまうこと、思わぬケガや病気によって今までどおりに働き続けられなくなることなど、身近な誰かの身に起きたことは、いつなんどき、自分の身に降りかからないとも限りません。

また、親や子どもの家族と同居することになってより広い住まいに買い替えることや、新天地を求めて住み替えたくなることだってあるでしょう。事実、旭化成ホームズグループの調査では、売買が成立した中古住宅のうち叩%がわずか築5年以下、築10年以下も含めると初%にも及ぶ、というデータもあります。

せっかく手に入れた新築住宅を叩年もたたないうちに手放している方が少なくないことがわかります。それでも、「土地神話」が生きていた時代なら、建物が二束三文にしか評価されなくても、土地の値上がり分で十分元が取れたかもしれません。

しかし、2009年に社団法人不動産流通経営協会が行った調査では、自宅を売った世帯のうち、実に約75%に売却損が発生しています。しかも、その売却損の金額が1000万円以上に上った世帯が約必%を占めているのです。

もしもあなたが家を売らなければならなくなったとき、その家が、買い手がつきにくい市場価値の低い建物だったとしたらどうでしょう?車を買うときなら、多くの人が「リセールパリュー(中古車として売りに出したときの価値)」を考えるのではないでしょうか。

自分の好みより売りやすきを優先して、白やシルバーの無難{資料)旭化成不動産株式会社な色の車を選ぶ人が多いと聞きます。同じように、家を買うときもぜひ、「売りに出したときの価値」を考えていただきたいと思います。それこそが、住まいの「資産価値」なのです。

中古住宅の市場において、建物の品質が適切に評価されないことは、買う人にとっても売る人にとっても不幸です。何十年ものローンを組んで買った家が、万一欠陥住宅だった大事な家を手放さなければならないときに、十分な対価が得られないとしたとしたらどちらも、あってはならないことです。

私たちの生活の基盤であり、大事な財産である「住まい」。買った人も、売った人も、幸せにならなければおかしいのです。そして、そのための市場環境を整えることが、私たち「優良ストック住宅推進協議会」の目標なのです。

自動車ならば、一定期間ごとに点検が義務づけられていて、これを怠れば公道を走ることはできません。中古車として取引される際には、販売前に販売業者が点検・整備するのが一般的です。

売る側も買う側も、走行距離や修理歴など、それまでの履歴を考慮して値付けや交渉を行うでしょう。車には「車検」があるのに、住宅に「家検」がないのはなぜでしょうか。

車は点検・整備を経て市場に出されるのに、住宅の売買では、点検の有無も補修の履歴も顧みられないのはどうしてでしょうか。車は道を走るけれど、家は個人の土地にとどまっていて、住人以外にかかわりを持たないから?

確かに、住宅は個人の持ち物であり、点検も修理もリフォームも、すべて持ち主の裁量に任されているのが現実です。けれども、住宅は一代限りのものとは限りません。子どもに引き継ぐこともあれば、他の人に譲り渡すこともあるでしょう。

次章で詳しく述べますが、これからは住宅の寿命を延ばすことが求められる時代です。家は一義的には個人の持ち物ですが、同時に社会資本でもあると捉えるべきでしょう。

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